【一陸技】工学A 令和5年1月期第1回 A-4 解説

2023-12-09一陸技

FM変調の問題。ベッセル関数Jn(x)などが出てくるので面食らうかもしれないが、基本用語の定義FM変調波のスペクトルをしっかり理解しておけば解ける問題。

占有周波数帯

電波法での定義は次になる。

六十一 「占有周波数帯幅」とは、その上限の周波数をこえて輻射され、及びその下限の周波数未満において輻射される平均電力がそれぞれ与えられた発射によつて輻射される全平均電力の〇・五パーセントに等しい上限及び下限の周波数帯幅をいう。ただし、周波数分割多重方式の場合、テレビジヨン伝送の場合等〇・五パーセントの比率が占有周波数帯幅及び必要周波数帯幅の定義を実際に適用することが困難な場合においては、異なる比率によることができる。

電波法 第一章 総則 第二条

とても分かりづらい文章だが、図で覚えておくとすんなり理解できる。

ざっくり言えば、真ん中の面積99%、その外側が片側ずつ0.5%となるように決めた周波数帯が占有周波数帯幅B[Hz]

■FM変調のスペクトルは以下のように、搬送波fcを中心に変調波fs刻みにピークが立つような形になり、理論的には無限に広がる。

さて、基礎事項の確認をしたところで問題を解いていく。

■変調信号fs = 10kHz, 最大周波数偏移ΔF = 40kHz なので、FMの変調率は公式より、

変調率 mf = ΔF / fs = 40kHz / 10kHz = 4

■1本1本のスペクトルのエネルギーの大きさは、ベッセル関数 Jn(mf)^2となる。変調率 mf = 4 だったので、表だと Jn(4)^2 を今回使うことになる。

■さて、占有周波数帯B[Hz]を求めたい。上記の表のJn(4) ^2を両サイドで足していって99%を超えるところで求めてもよいが、FMの占有周波数帯には近似公式があり、一陸技では頻出である。公式を用いると、

FM占有周波数帯 B[Hz] ≒ 2 ( fs + ΔF ) = 2 ( 10kHz + 40kHz ) = 100kHz

■占有周波数帯に含まれる側帯波の次数nは、以下のように考えればいい。

ベッセル関数をどこまで足し上げれば、エネルギーの99%を超えるかを考えればいい。

n合計
0までJ02(4)0.1577
1までJ02(4) + 2*J12(4)0.1665
2までJ02(4) + 2*J12(4) + 2*J22(4)0.4317
3までJ02(4) + 2*J12(4) + 2*J22(4) + 2*J32(4)0.8017
4までJ02(4) + 2*J12(4) + 2*J22(4) + 2*J32(4) + 2*J42(4)0.9597
5までJ02(4) + 2*J12(4) + 2*J22(4) + 2*J32(4) + 2*J42(4) + 2*J52(4)0.9945

n=5でようやく、99%を超えた。なので答えはn=5である。

ここで、「あれ?99%がラインならn=4では?」と思った人は注意。

問題文では「占有周波数帯に含まれるnの最大値」なので、間違えやすいがこのFM変調のスペクトルというのは理論計算上はδ関数の短冊の並びになる。なぜなら1本1本が単一周波数波だから。

なので本当の99%のラインは丁度、n=5のところにピッタリ重なってしまっている。この場合は、n=5本目まで含めて占有周波数帯として計上するべきだ。

なぜなら占有周波数帯というのは電波法上では「その電波がどのくらい周波数を占有してしまっているか」を表す指標であり、無線局はその規定範囲内に収めるように義務付けられている。従って、上の例でn=4としてしまうと、99%に全然達していない状態を占有周波数帯にしているので過小評価してしまうことになる。

※補足:しかしこの結果は、占有周波数帯 B = 100kHz と出ているので片側当たり50kHz、つまりn=5までが含まれることを意味している。わざわざ足し算で計算しなくてもOK。

以上より、n=5、B=100kHzの4が答え。

2023-12-09一陸技

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