【一陸技】工学A 令和5年1月期第1回 A-14 解説

2023-02-19一陸技

MSK(minimum shift keying)変調の問題。

『MSK変調とは、変調指数m=0.5のFSK変調のことであり、信号0,1に対して位相は\(±π/2\)進み、位相変化パターンは\(π/2\)シフトBPSKと同じである』ということは一陸技の参考書には載っているが数学的な詳細はデジタル変調の専門書を読まないと書いてない。ネットにもあまり詳しく書いてくれているところがないため、この記事では一陸技で最低限必要な理解+αくらの深さで解説を書く。

先にこの問題を答えを言っとくと3である。

FSK(Frequency Shift Keying)変調とは何か?

FSKとは、デジタル信号0,1,0,1…に対応させて周波数をf1,f2,f1,f2,…と切り替えて電波を送信するデジタル変調方式である。FSK変調には(1)非連続FSK (2)連続FSK の2種類あるが一般的には(2)波形・位相連続FSK のことを指すことが多い。連続FSKは位相、波形が不連続にならないのでスペクトルも狭くできる。

FSKの解析・・・FM変調の特別verと考える

(2)の連続FSKの場合で、数式による解析を行ってみる。簡単のため、送信するデジタル信号を0,1,0,1,…と順番である場合を考える。デジタル値0に対応する周波数をf1, デジタル値1に対応する周波数をf2とする。また、シンボル長をT[s]とする。

周波数の時間変化f(t)のグラフは以下のようになうる。ここで重要なパラメータを述べておく。周波数は時間間隔T[s]で切り替わる。この時間をシンボル時間と呼ぶ。またこの逆数1/T [Hz]シンボル周波数と呼ぶ。また、0,1,0,1,…は矩形波であり、その1周期分の時間は2T[s]となり、矩形波の周波数は1/2T [Hz]となる。FSKというのは実質、FM変調であり、周波数がf1f2という離散的な値の間でしか変化しない特別なFM変調とも言える。この解釈の元では、1/2Tの矩形波の周波数がこのFM変調の信号周波数ともいえる。一方、キャリア周波数に値するのは平均周波数 fc = ( f1 + f1 )/2 である。さらに、Δf = |f2 f1 |/2最大周波数偏移に相当する。

FM変調と類似しているため、FM変調で出てきた特徴量をこのFSK変調において適用すると、以下のように整理できる。

  • キャリア周波数 fc = ( f1 + f1 )/2
  • 最大周波数偏移 Δf = |f2 f1 |/2
  • 信号周波数  fs = 1/2T
  • 変調指数 m = (最大周波数偏移) / (信号周波数) = ( |f2 f1 |/2 ) / ( 1/2T ) =|f2 f1 |T =2ΔfT

これがFSKの重要な特徴量となる。

また、位相変化にも着目していく。キャリア周波数fcの波を\( Acos(2πf_{c}t) \)とする。それに対して、周波数がf1の波の式は、\( Acos(2πf_{c}t -2πΔft + φ_{1}) \) と書ける。fc – Δf = f1 だからだ。また、φ1はこのシンボルが開始した時点での初期位相(=それ以前までの位相の積み上げを引き継いでいる)とする。一方、周波数がf2の波の式は、\( Acos(2πf_{c}t +2πΔft + φ_{2}) \) である。よって、周波数f1の時はシンボル周期Tの間に位相は\(- 2πΔfT\)変化し、 周波数f2の時はシンボル周期Tの間に位相は\(+ 2πΔfT\)変化することになる。

  • 位相変化は1シンボル期間Tの間に、\(±2πΔfT\) = \(±2πΔfT\) = \(±πm\) (← \(m=2ΔfT\)の関係を用いて変形)

この事実が意味することを図示すると、以下のようにキャリア信号\(Acos(ω_{c}t)\)の位相は以下のように変化していくことになる。

信号が0,1,1,0…であれば、周波数はf1,f2,f2,f1…となり、位相変化は\(-πm,+πm,+πm, -πm,\)…となり、単位円上を上図のように遷移していく。

MSK(Minimum Shift Keying)変調とは何か?

MSKは上記で説明したFSKにおいて、変調指数がm=0.5の場合である。このとき、

m =2ΔfT = 0.5

また、この時、1シンボルごとの位相変化は \( ±πm = ±π/2 \) となる。

MSKは実質QPSK

1シンボルごとの位相変化が\(±π/2\)なので、位相の取りうる値は、\(0, π/2, π, 3π/2\) の4種類となり、これは実質QPSKと同等である。

問題の解説

[A] MSKはFSKの変調指数m=0.5の場合

[B] MSKの位相変化は\(±π/2\)

[C] MSK自体は実質QPSKであるが、同じ位相変化する変調方式はπ/2シフトBPSKπ/4シフトQPSKのどれか?という問題である。ここでこれらの変調方式をまとめてみる。

  • QPSK ・・・ 位相が1シンボルごとに、初期位相から±π/2ずつ変化するような変調方式。
  • π/2シフトBPSK・・・一回の変調 (1シンボル) 毎に互いにπ/2ラジアン位相の異なるBPSKを交互に用いるBPSK。
  • π/4シフトQPSK・・・一回の変調 (1シンボル) 毎に互いにπ/4ラジアン位相の異なるQPSKを交互に用いるQPSK。

図を見れば、位相変化パターンはπ/2シフトBPSKと一致することが分かる。

以上より、答えは3である。

2023-02-19一陸技

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