【一陸技】工学A 令和5年1月期第1回 A-16 解説
雑音に関する用語の問題。過去には令和2年11月期(2回目) A-16.でも出題されている。雑音温度や雑音指数は、いろいろと種類が多く用語もややこしい。無線工学Bでも雑音温度の計算は出てくるので、一度、整理が必要である。
雑音温度の分野は、「換算」という概念が非常に重要である。無線系において、雑音というのは基本的に熱雑音kBTであるが、これはあらゆるところで発生する。アンテナ部分、同軸ケーブル部分、アンプ内部、減衰器部分、、、etc。しかし、発生する箇所ごとに計算していたら非常に大変でややこしいので、ぜーんぶの雑音をひっくるめて、無線系のどこか1か所だけから発生したものとみなすのである。これが雑音の換算である。
雑音の換算は非常に種類が豊富であり、換算方法も考え方を理解していないと難しい。体系的な解説は別の記事で詳しくやるので、今回は、問題文に載っている雑音を中心に定義を確認していくに留める。一陸技の無線工学Aでは、雑音に関する正誤問題ほぼ同じ文章で出題されるため、本問題の選択肢を理解して覚えておくのが近道である。
本問題の正解は3である。選択肢の間違いを修正、および筆者の注釈を入れると以下のようになるので、このまま覚えてしまえばOK。
3.
低雑音増幅器の等価雑音温度Te[K]は、低雑音増幅器の内部で発生して出力される雑音電力(kToB)を入力端の値に換算((F-1)kToB)し、雑音温度((F-1)To)に変換したものであり、出力端の全雑音電力は(まず入力部から純粋に入ってくる熱雑音kToBと、増幅器内部雑音を入力部に換算したものkTeB=(F-1)kToBの和をとってk(To+Te)Bとし、これを増幅器に通すので利得gを掛算して)、
k(To – Te)Bgk(To + Te)Bg [W]で表される。ただし、kはボルツマン定数、Toは周囲温度、Bは増幅器の帯域幅、gは増幅器の利得である。
更に、正解の選択肢も注釈を入れておいたので、こちらを覚えるといい。
1.
動作雑音指数Fopは、システム雑音温度Ts[K]および周囲温度To[K]との間に、Fop = Ts / To の関係がある。熱雑音Toはある意味防げないものであるが、システム雑音Tsはシステムの作りがよければ小さくなる。動作雑音指数Fopとは、防げない熱雑音Toは差っ引いて、そのシステムが正味、どれだけ雑音性能がいいかを示している。
2.
システム雑音温度Tsは、アンテナ雑音温度Taと受信機雑音温度Te=(F-1)To(多くの場合、初段の低雑音増幅器の等価雑音温度)との和Ts = Ta + Teで表される。つまり、システム雑音温度とは、アンテナ~受信機内部の間に発生する全雑音を、受信機直前の位置で換算したものである。
4.
低雑音増幅器の雑音指数Fは、等価雑音温度Te[K]および周囲温度To[K]との間に、F=1+(Te/To)の関係がある。一般的な公式は、Te = (F-1)Toなので、これを変形しただけ。雑音指数Fは、増幅器内部でどれだけ雑音が発生するかの指標であり、F=1 ~ ∞の値を取る。F=1だと内部雑音無し、Fが増えていくほどその増幅器は内部雑音が発生しやすいということを意味している。
5.
アンテナを含む地球局の受信系の性能を定量的に表現するためのG/T[dB/K](受信機の性能指数と呼ぶ)には、一般に、受信機の低雑音増幅器の入力端で測定されるアンテナ利得G[dB]と低雑音増幅器の入力端で換算した雑音温度Te[K]との比G/Teが用いられる。アンテナの利得GはSNを良くする要因、雑音はSNを悪くする要因なので、要するにG/Tはアンテナと雑音どっちが強いかの指標である。