【一陸技】工学A 令和5年1月期第1回 A-19 解説

2023-12-09一陸技

SGの表示と端子電圧の関係の問題である。この問題は一陸技では数字を変えて昔から何度も出題されている典型問題である。測定器の表示方法の違い、測定器や受信機の入力インピーダンス出力インピーダンスをキチンと理解できているか?が問われている。

まず用語の確認。本問題では信号発生器SGが「電力表示[dBm]」表示だと言っているが、全部でどのような表示があるかというと

信号発生器SGの表示には3種類ある

電力表示

  • 単位:[mW] or [dBm]
  • 意味:SGの大元の信号電圧値(実効値)を、終端抵抗で消費している電力値に換算して表示。
  • 換算方法:信号電圧
  • 備考:SGの大元の信号電圧値(実効値)をv[V]としたとき、表示する電力は終端抵抗での消費電力なので、P = (終端抵抗の両端電圧)×(終端抵抗に流れる電流) = (v/2)×{v/(50Ω+50Ω)} = v2/(4×50Ω).
  • イメージ図:

終端(負荷端)電圧表示

  • 単位:[μVPD] or [dBμVPD]
  • 意味:SGの大元の信号電圧値(実効値)を、終端抵抗の両端電圧(実効値)に換算して表示。
  • 換算方法:SGの大元の信号電圧値(実効値)をv[V]としたとき、表示する終端抵抗の両端電圧(実効値)VPD=v/2.
  • 備考:PD=PD=Potential Difference, 電位差。国内アマチュア無線機のカタログに記載してある受信感度は、JAIA測定法が採用されており、こちらの終端電圧表示でなされている。
  • イメージ図:

開放電圧表示

  • 単位:[μVEMF] or [dBμVEMF]
  • 意味:SGの大元の信号電圧値(実効値)を、終端抵抗を接続していないときのSG出力端電圧(実効値)に換算して表示。
  • 換算方法:SGの大元の信号電圧値(実効値)をv[V]としたとき、表示する終端抵抗を接続していないときのSG出力端電圧(実効値)VPD=v.
  • 備考:EMF=Electro Motive Force, 起電力。電波法で規定されている「受信機入力電圧(=受信機の入力端子における信号源の開放電圧)」はこちらを測定すればよい。
  • イメージ図:

どの表示方法も、実際の測定値ではなくあくまで換算値であることに留意するべきだ。大元の信号電圧、電流値はSG内部が知っているが、SGはその先に終端抵抗がつけられているのかつけられていないのか、インピーダンスマッチはされているかは知る由もない。なのでSGとしては(SG出力インピーダンス)=(終端機器の入力インピーダンス)=50Ωだと仮定(つまりユーザーが正しく機器を接続していると信じて)して算出しているに過ぎない。

問題の解き方

さて、問題を解いていく。

問題文には「電力表示を用いて測定すると、-94.7[dBm](真数だと10-9.47[mW]=10-12.47[W])であった」と記載があるため、上で説明した通り、SGの内部信号電圧(実効値)をvとすると、 P=v2/(4×50[Ω]) より、\( v = \sqrt{4×50Ω×P} \)となる。

次に、問題は「受信機入力電圧(=受信機の入力端子における信号源の開放電圧)」に換算しろ、と言っているので換算式VPD=v を用いる(結局vそのまま)と、

\( V_{PD}=v = \sqrt{4×50[Ω]×P} = \sqrt{4×50[Ω]×10^{-12.47}[W]} = 6.03[μV] = 6[μV]\)

よって正解は5である。

2023-12-09一陸技

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