【一陸技】工学A 令和5年1月期第1回 B-1 解説
デジタル通信路におけるC/Nの問題である。こちらの問題は本文をしっかり読んでいけば解ける問題である。
(1)
シャノンの通信路符号化定理
誤りなく伝送できる単位時間当たりの最大の情報量R[bit/s]は、伝送路の帯域幅B[Hz], 平均搬送波電力[W], 雑音電力N[W]を用いて次のように表されることを示した。
\( R[bit/s] = B[Hz]×log_{2}(1+\dfrac{C[W]}{N[W]}) \)
これは、伝送速度R[bit/s]を一定にした場合、帯域幅W[Hz]とC/Nの間にはトレードオフがあるということを述べている。
(2)
- 受信1bit当たりのエネルギーをEb[J/bit]とする。
- 1[Hz]あたりの雑音電力密度をN0[W/Hz]とする。
- どんな変調方式でも、雑音に対する強さは受信機のEb/N0で決まる。
(3)
- シンボル長をT[s/シンボル]、1シンボル当たりのbit数をn[bit/シンボル]とする。これと(2)で定義したEb[J/bit]用いると、1シンボル期間のエネルギーは、Eb[J/bit] × n[bit/シンボル] = Ebn [J/シンボル](よって[ア]=4)と計算できる。
- また雑音電力N[W]は、1[Hz]あたりの雑音電力密度をN0[W/Hz]と、帯域B[Hz]を用いて、N[W] = N0[W/Hz] × B[Hz] = N0B [W] (よって[イ]=1)と計算できる。
- 搬送波電力C[W]は、一定期間(例えばシンボル期間T[s/シンボル])の搬送波の全エネルギー[J]を時間平均すると求められる。上で、1シンボル期間T[s/シンボル]のエネルギーはEbn [J/シンボル]なので、搬送波電力 C[W] = Ebn [J/シンボル] ÷ T[s/シンボル] = Ebn / T [W] (よって[ウ]=7)と計算できる。
- 上記より、C[W]とN[W]が違う物理量で表現できたので、C/N比を求めてみると、C/N = ( Ebn / T )/(N0B) となり、更にn/Tは1秒当たりの伝送速度、つまりR[bit/s]のことなので、C/N = EbR /N0B (よって[エ]=8)と計算できる。
(4)
(3)で書き換えたC/Nを用いて、(1)のシャノンの通信路符号化定理を書き換えると、以下のようになる。
\( \dfrac{R}{B} = log_{2}(1+\dfrac{E_{b}R}{N_{0}B}) \)
この式中のR/B [bit/s/Hz]は周波数利用効率という。これが大きいということは、帯域をあまり使わず単位時間に多くのデータを伝送できることを意味する。
(5)
(4)のシャノン通信路符号化定理の式をEb /N0(1bit当たりのエネルギー対雑音電力比)について解くと、
\( \dfrac{E_{b}}{N_{0}} = \dfrac{2^{\frac{R}{B}}-1}{\frac{R}{B}} \)
ここで帯域Bを増やしていくと、雑音N∝Bも増加してしまうので、\( \dfrac{E_{b}}{N_{0}} \)は極限値を取ってしまう。その極限値はロピタルの定理を用いて、
\( \lim_{\frac{R}{B} \to 0} \dfrac{2^{\frac{R}{B}}-1}{\frac{R}{B}} = \lim_{\frac{R}{B} \to 0} \dfrac{2^{\frac{R}{B}}log2}{1} \)
= log2 (真数)= 10log10(log2) (dB)= -1.59 ≒ -1.6[dB] (よって[オ]=10)となる。このlog2をシャノンの限界という。すなわち伝送量が少なければ必要なEb /N0も小さくて済むが、伝送量を極限まで少なくしたとしても、Eb /N0は少なくとも-1.6[dB]は必要になってきてしまう、という意味である。
以上